滅 多にＮＨＫを見ない私が、なぜか偶然に２度も観てしまった特集番組があった。１度目は途中から観たのだが、その映像の美しさや言葉の迫力に圧倒された。 「初めから観たかったな」と後悔していたら、しばらくして、また同じ番組が放映されていたので、今度は初めから終わりまでちゃんと観ることができた。予想 通りの素晴らしさであり、感動のオンパレードであった。
後で知ったのだが、視聴者から の大反響で前代未聞の1ヶ月で3度の再放送を実施した大ヒット番組であった。何の番組かというと、鎌倉時代からおよそ７５０年間続く曹洞宗大本山・永平寺 （福井県）の第７８代史上最高齢の住職、宮崎奕保（みやざきえきほ）禅師（104歳）の特集番組であった。
番組の紹介にはこう書いてある。
ひたすら厳しい戒律を守り続け、その姿は寺で暮らす修行僧にとってはまさに生きた仏のような存在。その禅師の姿を通して、禅とは何か、そして人が生きる道 とは何なのかを探る。104歳を迎えた現在も日々坐禅や写経に励む宮崎禅師は、自らの言葉で教えや思いを語る。それは誰の心にも響く教訓であり、普遍的で 美しい。
禅 とはナンゾヤなどの疑問を持ちつつ、食入るように番組を見続けた。高校時代は少林寺拳法部で禅の真似事は日常的にやらされてはいたが、その真髄になど到底 触れることはできなかった。過去いろんな禅の本も読み漁ってはみたものの、理解できないままであった。ここ数年に発行された何冊かの禅の本を読んでみても 平易なようで難解であった。
しかし、この番組は違った。いたって平易な言葉で納得させ られるものばかりであった。本物と呼ばれる人に共通するのは、とても分かりやすいということだ。難しい事を難しく話す人は多いが、難しい事を分かりやすく 簡単に説明することほど難しいことはない。本物はやっぱ違うな～と一人で納得していた。
この番組を見終わって強烈に心に残っているのが次の３つの言葉だった。
禅とは？なんぞや？
心が歪むと、背筋が歪む。
背筋が真っ直ぐということは、心が真っ直ぐということや。
「ふむふむ、だから座禅で背筋を真っ直ぐにして、心を真っ直ぐにするのか！」
悟りとは？
死を気にやむ事もない。なんにも気にせんと平気で生きとるのが悟りや！
「普通に平気で生きてる人はみんな悟っているということ。これって凄いことだ！」
自然の法？
時が来たならば ちゃんと花が咲き、そして黙って褒められても褒められんでも
すべきことをして 黙って去っていく
そういうのが実行であり 教えであり 真理だ
「禅にしても、お寺の修行にしても、履物を揃えるにしても、当たり前のことを当たり前にする。これが自然の法！当たり前ということだ！ 」
掃除も整理整頓も当たり前のように自然に行なう嫁の姿が神々しく思えた。自分の机の上すら当たり前に掃除できない私には痛烈であった。
その他、いろんなお話を聞いているういちに、久々に心の中に清涼とした風が吹き込んだような気がした。
・道元禅師はおっしゃるんや
「坐禅をすれば善き人となる」
・平気で生きておることは難しい
死ぬときが来たら死んだらいいんや
平気で生きておれるときは
平気で生きておったらいいんや
・いわゆる わたくしが永平寺や
わたしは宮崎奕保やけども
「永平寺さん」言うたら「はい」言うんや－
永平寺とわしは一つや
自分ぐらい大事なものはない
自分ぐらい大事なものはええけど
人はどうでもええんではなくて
環境もみな自分だから
わたしが永平寺やから
永平寺を大事にすることは
自分を大事にしておる
・自然は立派やね
わたしは日記をつけておるけれども
何月何日に花が咲いた
何月何日に虫が鳴いた
ほとんど違わない
規則正しい
そういうのが法だ
法にかなったのが大自然や
法にかなっておる
だから
自然の法則をまねて人間が暮らす
人間の欲望に従っては迷いの世界だ
真理を黙って実行するというのが
大自然だ
誰に褒められるということも思わんし
これだけのことをしたら これだけの報酬が
もらえるということもない
時が来たならば ちゃんと花が咲き
そして黙って
褒められても褒められんでも
すべきことをして 黙って去っていく
そういうのが実行であり 教えであり 真理だ
お恥ずかしいが、私の理解はまだまだ陳腐なようである。３日間ほどきれいであった私の机の上は再び書類の山と化していた。
悟りの道はまだまだ険しい・・・(^^ゞ
